ステロイド外用薬について

ステロイド外用薬はプラセボより有意に効果的であることが示されており,アトピー性皮膚炎の炎症を鎮静することができる薬剤です。使用する部位によってステロイドの吸収率が異なるため、使用時には医師の指示に従ってください。ここではステロイドのランク、剤型、使用・外用、副作用などについて記載します。

 

ステロイドのランク

使用するステロイドのランクは個々の皮疹の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に選択し、必要な量を必要な期間で使用することが重要です。使用する部位によってステロイドの吸収率が異ります。使用については医師の指示に従ってください。

ステロイドのランクについてはアトピー性皮膚炎のステロイドのランクを参考にしてください。

 

ステロイドの剤型

ステロイドには軟膏、クリーム、ローション、テープ剤などの剤型があります。これらの選択は、病変の性状,部位などを考慮して選択することが必要です。乾燥を基盤とする本症の治療には軟膏を選択するのが基本です。一方、夏期など軟膏の使用感が外用アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を低下させる場合にはびらん面や搔破痕を避けてクリーム基剤を選択することもあります。また、軟膏タイプのベタベタ感が苦手な場合にもクリームやローション型の剤型を使用する場合もあります。

 

ステロイドの外用量

第2指の先端から第1関節部まで口径5mmのチューブから押し出された量(約0.5g)が成人の体表面積のおよそ2%に対する適量です。炎症箇所に合わせて目安としてください。

 

ステロイド外用の使用回数

急性増悪の場合には朝と夕(入浴後)の1日2回を原則とします。炎症が落ち着いてきたら1日1回に外用回数を減らし,寛解導入を目指します。1日2回外用と1回外用で効果に差がないとするレビューも複数あり、一般的には1日1回の外用でも十分な効果があると考えられます。使用回数が少なければ外用アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)が向上することも期待できるため、急性増悪した皮疹には1日2回外用して早く軽快させ、軽快したら寛解を目指して1日1回外用させるようにします。

 

ステロイドの外用中止

炎症症状の鎮静後にステロイド外用薬を中止する際には,急激に中止することなく,寛解を維持しながら漸減あるいは間欠投与(プロアクティブ療法)を行い徐々に中止しします。長期に内服した場合、副腎皮質からのステロイドホルモンが分泌されなくなり、急に薬を飲まなくなると、体の中のステロイドホルモンが不足し、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下などの症状が見られることがあります。これをステロイド離脱症候群といいます。自己判断で急に中止しないようにしてください。

 

乳幼児,小児のステロイドの使用

原則として、皮疹の重症度が重症あるいは中等症では1ランク低いステロイド外用薬を使用します。ただし、効果が見込めない場合や得られない場合など、十分な管理下で高いランクのステロイド外用薬を使用し、強い炎症の状態を長引かせることなく速やかに軽快させることが必要な場合があります。

 

ステロイドの顔面への使用

顔面や頸部などは高い薬剤吸収率をもち、ステロイド外用薬による局所副作用の発生に特に注意が必要な部位であるため、長期間連用しないように注意してください。原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用薬を使用しますが、苔癬化をともなう皮疹など重症の皮膚炎に対しては個疹の重症度に応じた薬剤を用いて速やかに寛解に導入した後、漸減あるいは間欠投与へ移行する工夫が必要です。なお、顔面はタクロリムス軟膏の高い適応がある部位であり、そのガイダンスに従って使用することも積極的に考慮します。

 

ステロイドの副作用

全身性の副作用については強いステロイド外用薬の外用で一部の症例で副腎機能抑制が生じたとする報告があります。弱いステロイド外用薬の使用例では副腎機能抑制、成長障害などは確認されていません。適切に使用すれば全身的な副作用は少なく、ステロイドは長年使用されていることから安全性は高いといえます。局所的副作用については、皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド潮紅、多毛、皮膚萎縮線条、細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症の悪化などが発生する可能性がありますが、皮膚萎縮線条を除いて多くは中止あるいは適切な処置により軽快します。

 

ステロイド外用薬の眼への副作用

眼周囲の病変に対するステロイド外用薬の副作用として問題となるの、,白内障と緑内障です。白内障に関しては
顔面皮疹の悪化や叩打癖が危険因子と考えられるほか,アトピー性皮膚炎自体による炎症もリスクファクターと考えられています。従って、皮疹のコントロールが白内障の発症予防に重要です。緑内障については、弱いランクのステロイドを少量使用する分にはリスクは低いと考えられますが、ステロイド外用治療後の緑内障の症例は多数報告されていることから、眼周囲や眼瞼皮膚にステロイド外用薬(特に強いランクのもの)を使用する際は外用量や使用期間に注意するほか,タクロリムス軟膏への切り替えも検討する必要があります。これらの眼合併症が懸念される場合は医師に相談し、必要に応じて眼科を紹介してもらってください。

 

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抗菌薬併用の是非

抗菌薬が添加されたステロイド外用薬があります。抗菌薬の添加はステロイド単剤外用に比しアトピー性皮膚炎の症状改善に優位性を認めないことから、皮膚炎の症状の改善を目的にする場合にはステロイド単剤でよいです。患部に感染症を併発した場合はステロイド外用薬に抗菌薬を添加するのではなく、感染症に特化した治療を必要に応じて行います。

 

ステロイドに対する不安への対処

ステロイド外用薬に対する誤解であるステロイド内服薬の副作用との混同、アトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用薬の副作用との混同が多いことから、ステロイド外用薬への必要以上の恐怖感、忌避が生じ、アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)の低下によって期待した治療効果が得られない例がしばしばみられます。また、不適切な使用により,効果を実感できないことでステロイド外用薬に対する不信感を抱く事もあります。その誤解を解くためには医師などに十分に説明受けたり、ステロイドの正しい知識について調べたるすることが重要です。

 

タキフィラキシーについて

ステロイド外用薬を用いた治療中に改善していた症状が再燃することがあります。この現象の背景にステロイド外用薬の長期使用に伴う急速な効果の減弱(タキフィラキシー)の可能性があります。皮膚炎の治療中に期待された効果が得られない場合は医師に相談することをお勧めします。

 

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