ステロイドを含まないタクロリムス(プロトピック)

タクロリムスは細胞内のカルシニューリンを阻害する薬剤であり,副腎皮質ステロイドとはまったく異なった作用機序で炎症を抑制するものです。タクロリムス軟膏は副作用の懸念などからステロイド外用薬では治療が困難であったアトピー性皮膚炎の皮疹に対しても高い有効性を期待できる薬になります。本剤の薬効は薬剤の吸収度に依存してしていて、塗布部位およびそのバリアの状態に大きく影響をうけます。特に顔面・頸部の皮疹に対して高い適応のある薬剤として位置づけられています。一方、びらん,潰瘍面には使用できず、薬効の強さには限界があるなど、ステロイド外用薬にはない使用上の制約があります。タクロリムス軟膏には0.1%成人用と 0.03%小児用があります。2 歳未満の小児には安全性が確立していないため使用できません。また、妊婦や授乳中の婦人も使用できません。タクロリムスはプロトピックという製品名で処方されています。

 

タクロリムスの外用量

5 g チューブから 1 cm押し出した量の0.1 gで 10 cm 四方を外用する程度を目安とします。なお、成人での長期観察試験の結果を考え、血中濃度の上昇を回避し、安全性を確保するために成人での 0.1% 軟膏 1 回使用量の上限は 5 g となっています。小児のタクロリムス0.03% 軟膏の使用量は、 2~5 歳(20 kg 未満)で 1 回 1g まで,6~12 歳(20 kg~50 kg)では 2~4 g,13 歳以上(50 kg 以上)は 5 g までとされています。

 

タクロリムスの外用方法

タクロリムスは経皮吸収のよい顔面や頸部にはきわめて有効な薬です。また、ステロイド外用薬による局所性副作用が認められる部位など、ステロイド外用薬等の既存療法では効果が不十分、または副作用によりこれらの投与が躊躇される場合には高い適応を有します。体幹、四肢を対象としたタクロリムス(成人用 0.1%)の有効性はストロングクラスのステロイド外用薬とほぼ同等であると考えられます。強力な薬効を必要とする重症の皮疹を生じた部位に使用する場合には、原則としてまずベリーストロングクラス以上のステロイド外用薬により皮疹の改善を図ったのちにタクロリムス軟膏に移行するとよいとされています。タクロリムスとステロイドの使い分けによってステロイド外用薬の使用量を減量しうる場合も少なくありません。

タクロリムス使用時にはしばしば塗布部位に一過性の灼熱感、ほてり感などの刺激症状が現れることがありますがが、これらの症状は使用開始時に現れ、皮疹の改善に伴い消失することが多いです。タクロリムスの使用により、血中への移行が高まる、または、刺激性が強まる可能性が考えられる部位や皮疹、すなわち粘膜、外陰部、びらん・潰瘍面には使用してはいけません。密封法および重層法はタクロリムスの血中への移行が高まる可能性があるので行わないようにしてください。一般にびらん・潰瘍面が顕著な場合には予め他の外用薬などにより皮疹を改善させた後に使用を開始するようにします。また、魚鱗癬様紅皮症を呈する疾患の患者では経皮吸収が高く本剤の血中濃度が高くなり,腎障害等の副作用が発現する可能性があるので使用できません。

 

タクロリムスの副作用

タクロリムスの局所の有害事象として、灼熱感、瘙痒、紅斑等が確認されています。これらは皮疹の改善に伴って軽減、消失することが多い傾向にあります。タクロリムスにはステロイド外用薬の長期使用でみられる皮膚萎縮は確認されていません。タクロリムス外用薬塗布によって血中にタクロリムスが検出されますが、血中への移行に起因する全身的な有害事象や毒性は確認されていません。

 

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