妊娠のアトピー性皮膚炎の薬物療法

妊娠・授乳婦への配慮

妊娠中は母体が使用している薬剤の胎児への影響や胎児のアトピー性皮膚炎や食物アレルギー発症について不安を持つ妊婦は少なくなありません。時に胎児への影響を心配して薬物治療を中断し、症状の悪化をきたす例がみられますが、妊娠中・授乳中も必要な治療は適切に行うべきです。通常のステロイド外用療法では、全身循環への吸収は少なく、先天異常、胎児発育への影響はともに問題となりません。ただし、ヨーロッパの分類における potent,very potent 群のステロイド外用薬の大量外用による出生時体重の低下の可能性は否定できないため、使用量と胎児発育に注意する必要があります。また、そのような懸念を回避できるよう妊娠前から皮膚炎を良好にコントロールしておくことが望まれます。授乳婦の乳房へのステロイド外用が必要な場合は、乳児が直接経口摂取しないように注意してください。

全身投与薬剤のうち、抗ヒスタミン薬については疫学研究で先天異常との関連はないとされており、治療上必要な際には投与してもよいと考えられています。ただし、診療においては安全性に関する最新の情報にもとづき、対応を行ってください。授乳婦に抗ヒスタミン薬の投与が必要な時は一般に非鎮静性第 2 世代抗ヒスタミン薬を用いることが勧められますが、個々の薬剤については安全性に関する最新の情報への同様の配慮が必要です。妊娠中では体質の変化を感じる方が多いとは思います。アトピー性皮膚炎もその一つで体質の変化、ホルモンバランス、ストレスなどから妊娠性痒疹を発症しアトピーを悪化させてしまうことがあります。妊娠中は薬を使うことに抵抗があるかもしれませんが医師の指示通りの適切に使用してください。

 

アトピー性皮膚炎は赤ちゃんに遺伝するのか?

父か母のどちらかがアトピー性皮膚炎だった場合、父と母のどちらもアトピー性皮膚炎でないと比べて、赤ちゃんに遺伝する確率は2倍、父と母のどちらもアトピー性皮膚炎だった場合、赤ちゃんに遺伝する確率は4倍になる報告があります。遺伝する確率は高いのかもしれませんが、アトピー素因があったとしても発症するかどうかはその後の生活環境などによって変わってくるので必ずしもアトピー性皮膚炎になるとは限りません。父と母のどちらもアトピー性皮膚炎でない場合でも赤ちゃんがアトピー性皮膚炎を発症してしまうことはあります。このため、アトピー性皮膚炎だからといってあまり意識しなくてもよいでしょう。妊娠中はホルモンバランスが乱れ、体も心も不安定になりやすい時期です。そこにアトピー性皮膚炎が加わると、自分の体や赤ちゃんのことで余計にナーバスになってしまうかもしれません。しかし、妊娠中に不安やストレスを溜め込んでしまうと、別の病状を引き起こしてしまう可能性があります。不安があれば一人で抱え込まず、早めに医師に相談しましょう。心配し過ぎないようにすることがとても大切です。

 

妊娠中の皮膚疾患について

妊娠中には様々な皮膚疾患が現れることがあります。これらの皮膚疾患によりアトピー性皮膚炎の悪化も考えられますので、皮膚に異常を感じたら速やかに医師に相談しましょう。

妊娠性掻痒症

妊娠早期に全身にかゆみが出現し、直接かゆみを引き起こす発疹がみられない疾患です。特に手足が夜間に非常にかゆくなるものもあり、妊娠中期から後期に胆汁うっ滞を伴って生じることもあります。

妊娠性痒疹

妊娠3か月ごろからかゆみのあるボツボツとした発疹が体や四肢にでてくる疾患です。かゆみが強く、引っ掻いているうちに次第に赤茶色の固い発疹(痒疹)になり治りにくくなることが多いです。

多形妊娠疹

はじめての妊娠の後期に多く、妊娠線のそばや体部、四肢に赤いかゆみのある発疹が出てくる疾患です。じんましんのように赤みのあるすこし盛り上がった発疹でかゆみを伴います。

下肢静脈瘤・鬱滞性皮膚炎

妊娠すると大きくなった子宮の影響で、一度下肢に下がった血流が心臓に戻りにくくなります。またホルモンの影響で血管が拡張しやすくなるため、下腿の血管がこぶのように広がり、その周囲に湿疹ができて来ることがあります。

 

アトピー性皮膚炎の対策についてはアトピー性皮膚炎の改善・治療を参考にしてください。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です